大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

御所恵比寿神社〜商人の町・御所まちを見守る、えべっさんの大きなご利益

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奈良県御所市の中心部、昔ながらの商家や町家が残る中央通りの一角に、小さな石鳥居が立っている。そこをくぐると現れるのが御所恵比寿(ごせえびす)神社だ。

大きな社ではないが、古い石碑や木造の社殿に寄り添うように手入れされた木々があり、訪れる人を静かに迎えてくれる。暮らしのすぐそばにある神社だからこそ、普段から地元の人々が足を運び、祈りを捧げる姿が目に浮かぶ。

歴史

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御所恵比寿神社の始まりは、今から1200年前の奈良朝時代にさかのぼる。当時は「御所神社」と呼ばれ、御所村の氏神として地域を見守ってきた。

その後、関ヶ原の戦いで功績を挙げた桑山元晴がこの地に城を築き、二万八千石の領主となった慶長年間に、御所は城下町として発展。多くの商家が軒を連ね、にぎやかな町となった。

町の人々は商売繁盛を願い、蛇穴村(現在の奈良県御所市蛇穴)にあった木彫の恵比須座像を迎え、御所神社は「恵比須神社」と呼ばれるようになる。嘉永七年(1854年)の棟札が残り、歴史の歩みを今に伝えている。昭和9年の都市計画で社地は現在地に移り、平成3年には新たに社殿が造営された。長い時代を経ながらも、人々の祈りが絶えることはなかったのだ。

祭神

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御祭神は事代主命(ことしろぬしのみこと)。七福神の恵比寿様として親しまれる神であり、釣竿を手に鯛を抱く姿から、本来は漁業の神として信仰されてきた。御所では「商売繁盛の守り神」として篤く祀られ、今日も商人や家庭の暮らしを支えている。

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同じ中央通りにある「東川酒店」や、新地商店街の商売も、この恵比寿さんに守られている。

歳時記(例祭)

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毎年2月9日の「初えびす」には、多くの人が参拝に訪れる。大規模な祭りではないが、町の人々が顔を合わせ、互いの商売繁盛や家内安全を願う温かな行事だ。昔から変わらぬ空気に触れると、御所の町に受け継がれてきた人と人とのつながりを肌で感じられる。

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石鳥居の向こうに広がる小さな境内には、派手さはない。しかし、商家の軒並みとともに歩んできた歴史と、人々の願いが息づいている。御所のまちを歩きながら、この神社に立ち寄れば、商人の町を支えてきた「えべっさん」のやさしい眼差しを感じることができるだろう。旅の途中で一服するように、心が少し軽くなる場所である。

  • 歴史:奈良時代
  • 祭神:事代主命
  • 例祭:2月9日
  • アクセス:JR御所駅から徒歩すぐ

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