
全国に「春日神社」と名のつく社は3000を超える。奈良県桜井市に限っても、5つ以上が点在している。呼び名も「春日神社」や「春日社」と揺らぎ、祀られる神々もそれぞれに異なる。だが、その中にあって、ひときわ神秘の色を濃く纏うのが、三輪にひっそりと鎮座する「春日社」である。

ここは大神神社の末社にあたり、主祭神と深い縁を結ぶ神々、あるいは地域と生活に息づく神を祀る社だ。

創建の年代は定かではない。ただ春日大社が創建されたのが天平宝字2年、西暦768年であることを思えば、それ以後、すなわち平安の世に入ってからであるのは間違いない。石壇の上に春日造の本殿が立ち、2月1日に例祭が行われる。
祭神

春日社は全国の春日神社と同じ神を祀る。天児屋根命(あめのこやねのみこと)、武甕槌命(たけみかづちのみこと)、経津主命(ふつぬしのみこと)、姫大神(ひめのおおかみ)の四柱を祀る。家内安全、厄除け、交通安全、学問、縁結びなど、多様なご利益があるとされる。
天児屋根命(あめのこやねのみこと)
中臣氏(藤原氏)の祖神とされ、祝詞を奏上する知恵の神様。
武甕槌命(たけみかづちのみこと)
出雲の国譲りを成功させた武神で、勝運、産業発展、交通安全などの利益がある。
経津主命(ふつぬしのみこと)
武甕槌命とともに国譲りや神武東征を成功に導いた武神で、災難除け、交通安全、勝運などの利益がある。斎主神(さいしゅのかみ)と表記されることもある。
姫大神(ひめのおおかみ)
天児屋根命の妃神とされる女神で、家内安全、夫婦円満、良縁成就、子育てなどの利益がある。
春日社の場所

春日社は、平等寺の北東、大行事社を過ぎた先にある。だが場所は奇妙で、地元の人でさえ生涯1度も訪れない者が多い。

道は細く、車1台が通るのがやっと。対向車に出くわせば引き返すのも難儀だ。道端のフェンスにはイノシシ除けの罠が張り巡らされ、高圧電流が流れている。その物々しさに思わず足がすくむ。

山道はやけに静まり返り、幼い子どもなら怯えてしまうかもしれない。

春日社の隣には、古い教えを伝える「大三輪教」の本院があり、時折その読経の声が山を下り、三輪の町の奥まで届くことがある。

やがて目に入るのは立派な鳥居。だがそこを春日社と早合点してはならない。

左に折れれば小さな八代があるが、それは大三輪教のものであって春日社ではない。

さらに奥へ、さらに奥へと進むと、本物の春日社が待っている。道を誤らぬよう心して歩もう。
- 歴史:不明
- 祭神:天児屋根命、武甕槌命、経津主命、姫大神
- 例祭:2月1日
- アクセス:JR三輪駅から徒歩15分
三輪にある春日神社
桜井の春日神社
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