
日本酒には様々な分類があるが、最も“日常の酒”として親しまれてきたのが本醸造酒。
本醸造とは、米・米麹に加えて醸造アルコールを少量加えた日本酒のことで、発酵由来の香りを引き出し、味わいをすっきりと整える。近年は純米酒がブームだが、今なお「本醸造こそが一番うまい」と語る日本酒ラヴァーは少なくない。
本醸造酒は、価格を抑え、日々の晩酌に寄り添う“デイリー酒”として発展してきた歴史がある。いわゆる「経済酒」としての側面だが、単に安いだけはない。軽やかで飲み飽きしない、その性格こそが生活に溶け込む酒の役割を担ってきた。
本醸造の特徴は、淡麗でキレのある味わい。醸造アルコールが香りの輪郭を引き締めるため、フルーティーな香りが立ちやすく、後味は軽やかになる。派手さよりも、飲むほどに“戻ってくる味”を求める人に向いている。
そんな本醸造の魅力を改めて知るなら、この三本がふさわしい。奈良県桜井市三輪にある「今西酒造」が手がける、本醸造酒のおすすめを紹介する。
三諸杉 上撰(本醸造)

- 銘柄:三諸杉 上撰
- 原料米:非公開(ヒノヒカリという情報あり)
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
- アルコール:15度
- 精米歩合:表記なし(70%という情報あり)
- 価格:1,100円(720ml)/2,200円(1.8L)
「三諸杉 上撰」は、昔ながらの四段仕込みで仕上げた三諸杉を代表する“食中酒の核”ともいえる一本。やわらかな口当たりに、すっと消える後味。その飲み心地の良さはまさに上撰ならではで、日常の食卓にもっとも寄り添う酒といっていい。
ラベルには、三輪山の麓に鎮座する神社の社殿が描かれている。神域の静けさを切り取ったような意匠で、今西酒造が守り続けてきた土地の息吹と歴史が、瓶そのものから感じられる。
「上撰(じょうせん)」という格付けは、「特撰」「佳撰」と並ぶ日本酒のランクの一つで、かつての特級・一級・二級でいえば“一級酒”に相当する。普段使いしやすい価格帯でありながら、確かな満足感がある。
味わい

注がれた酒は、夕暮れ時の川面を思わせる穏やかな光を宿している。口に含むと、まずやわらかな膨らみが舌を包み込む。華やかさよりも存在感のある落ち着き。米の旨味が静かな波紋のように広がり、「重さ」と「複雑さ」がほどよく共存している。
余韻の最後には、醸造アルコール由来の軽い影がふっと覗く。だがそれが邪魔になることはなく、むしろ料理の余韻をさっと洗い、次のひと口を誘う合図になる。飲み進めるほど、表情が少しずつ変わる“日々の酒”らしい奥ゆかしさがある。
相性の良い料理

- おにぎり:米同士が呼応し、酒の輪郭が際立つ
- 焼きそば:ソースの重さを清らかにリセット
- 冷奴:豆腐を背景に酒の味が鮮明になる
- 親子丼:甘みと卵に触れ、酒がフルーティーに変化
- キムチ:酸味と辛味を柔らかく包み込む
- 鉄火丼:赤身のコクに寄り添い、深い調和を生む
「三諸杉 上撰」は単体で飲むより、料理と合わせることで真価を発揮する一本だ。塩むすびとは米の旨味で共鳴し、焼きそばの濃厚さは清流のように洗い流す。親子丼に合わせると驚くほどフルーティーになり、鉄火丼とは深海の静けさのような調和を生む。素朴な家庭料理から魚介の丼物まで受け止める、懐の深い食中酒である。
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日本酒サミットで1位に輝いた「ディオアビータ」
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鬼ごのみ

- 原料米:非公開(ヒノヒカリやヒトメボレの情報あり)
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
- アルコール:14度
- 精米歩合:70%
- 価格:1,790円(720ml)
「鬼ごのみ」は、今西酒造が冬限定でリリースするお酒。奈良・三輪の冬が近づくと、今西酒造の軒先に新しい杉玉が掛け替えられる。青々としたその球体の下に、ひっそりと、確かな存在感で姿を現すのが冬季限定酒「鬼ごのみ」だ。30年以上愛され続けるロングセラー。先代の蔵元が「鬼でさえ好む旨口の酒」を目指して仕込んだ一本で、冬の三輪の風物詩としてすっかり定着している。


ラインナップは2種類。「生原酒」は生まれたての酒をそのまま瓶に閉じ込めた、力強くも瑞々しい味わい。一方、「おり酒」は搾りたての白濁した部分だけを集めた、濃醇で柔らかな飲み心地が魅力。どちらも、三輪山の伏流水が生む澄んだキレと、米の旨みが溶け合い、寒さを忘れさせる温もりを抱いている。
鬼ごのみ しぼりたて 無濾過 生酒

「鬼ごのみ しぼりたて 無濾過 生酒」は、しぼりたての生酒を無濾過で瓶詰めし、米の旨みを生かした濃酵旨口の清酒。
味わい

ひと口目は、キレのある辛口がすっと駆け抜ける。すぐにフルーティーな甘みが追いかけ、冬の空気が陽光に溶けていくように表情を変える。無濾過ならではの濃醇な旨味を抱えながら、後口は驚くほど澄んでいて、翌日には角の取れたやわらかさが顔を出す。辛さと甘みがせめぎ合い、最終的には静かな調和へと落ち着く一本。
相性の良い料理

豆乳鍋/さつまいも料理/生ハム/奈良漬/さんま寿司/焼肉/焼きそば
まろやかな鍋物から脂のある肉料理まで受け止めつつ、ソース系の甘みも包み込む懐深い食中酒。
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日本酒サミットで1位に輝いた「ディオアビータ」
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鬼ごのみ おり酒

「鬼ごのみ おり酒」は、醪(もろみ)を搾った直後の酒に残る白い沈殿物をそのまま瓶詰め。心地よい苦味と、シュワシュワのガス感のある口当たりの良さが特徴。
味わい

ひと口目に広がるのは、淡雪のような軽やかな苦味。口中に静かに広がるガス感が、新雪を踏むときのような清らかな冷気を思わせる。甘みは控えめで、旨味は凛とし、後口には静かな余韻が淡く残る。冷たさの奥にぬくもりが灯る、冬だけの特別な一杯。
相性の良い料理

ハンバーガー/フライドポテト/奈良漬/とんこつラーメン/ミートソースパスタ
油を清めるように洗い流し、濃厚な料理の後味を締め、トマトの酸味とも心地よく共鳴する。洋食にも発酵食品にも寄り添う万能の食中酒。
原料米:奈良県産ヒノヒカリ

今西酒造のラベルには、原料米は「米(国産)」としか書かれていないが、酒屋さんなどの情報によると、本醸造の米は奈良県産のヒノヒカリで、精米歩合は70%とのこと。
ヒノヒカリとは、1989年に宮崎県で「コシヒカリ」と「黄金晴」を交配して育成された、西日本に多い主食用米。近年ではその味わいや特徴を活かした日本酒造りにも使われ、酒米の基準は満たさないものの、日本酒に合う風味を持つ。フルーティーな甘み、旨み、適度な酸味がバランスよく調和し、ふくよかで繊細な味わいの日本酒に仕上がる。
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日本酒サミットで1位に輝いた「ディオアビータ」
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酒蔵:今西酒造

奈良県桜井市三輪にある今西酒造は、万治三年(1660年)創業の酒蔵で、現在は十四代目の今西将之が蔵を率いている。日本最古の神社・大神神社の門前に位置し、酒の祖神を祀る活日神社や杉玉発祥の地としての歴史を背負う。蔵の理念は「清く、正しい、酒造り」であり、三輪山の伏流水「神宿る水」と米を大切に使い、蔵元自ら田んぼに立つ。

十四代目が継いだ当時、蔵は債務超過で荒れていたが、修行を重ね、米洗いの地道な作業を一万回以上繰り返し、酒質を高めていった。その結果、「三諸杉」「みむろ杉」は日本酒専門家や品評会で高く評価され、仙台日本酒サミットでは蔵部門・酒販店部門で4年連続1位を獲得している。山口智子、中田英寿、須藤元気などの著名人も酒蔵を訪ね、いまや全国的に注目を集める酒蔵であり、入手困難になりつつある。
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日本酒サミットで1位に輝いた「ディオアビータ」
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日本酒におすすめのグラス
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今西酒造の「三諸杉」シリーズ
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