大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

飛鳥鍋〜日本最古のミルク鍋、奈良で1300年続く滋味の沼

飛鳥鍋〜日本最古のミルク鍋、奈良で1300年続く滋味の沼

飛鳥鍋は、鶏肉と野菜を牛乳+だし汁で煮込む奈良県の郷土料理。飛鳥時代に唐から伝わった乳製品を使い、鶏肉や野菜を牛乳で煮ていたのが起源とされる。現代では、鶏がらスープに牛乳を合わせる作り方が一般的で、まろやかな口当たりと具材のうま味をしっかり味わえる。締めにうどんを入れたり、溶き卵にくぐらせるなど食べ方の自由度も高く、鍋好きにはたまらない一品。身体の芯まであたたまる、奈良の味である。

飛鳥鍋の歴史

橿原神宮のCafé橿乃杜「大和肉鶏の飛鳥鍋風うどん」

飛鳥鍋の歴史は、645年頃(大化の改新の時代) にまで遡る。第36代・孝徳天皇の時代、唐の使者が練乳のような乳製品を伝え、天皇に献上した。それをきっかけに宮中で乳牛が飼われ、日本で初めて「牛乳文化」が芽生える。

当時、牛乳は貴族の飲み物だったが、あまりの美味しさから僧侶たちも隠れて飲むようになり、やがて飼っていた鶏肉を牛乳で煮て食べた。これが飛鳥鍋の原型だといわれている。庶民に広がると、牛乳は高価なためヤギ乳を使用。そして昭和初期、地元・明日香の名物料理として、牛乳を使った現在のスタイルが生まれた。

飛鳥鍋の材料(2人前)

飛鳥鍋

  • 鶏もも肉200g
  • 白菜:200g
  • しめじ:1パック
  • ニンジン:1/2本
  • 絹豆腐:200g
  • 牛乳:400ml
  • 水:200ml
  • 赤味噌:大さじ2
  • 鶏ガラスープの素:小さじ2
  • 塩:少々

具材は春雨、ゴボウ、春菊など、冷蔵庫にある野菜に置き換えても問題ない。最大のポイントは“味噌を加えること”。邪道になるがコクが生まれ、味の深みが一段アップする。ちなみに、牛乳を豆乳に替えると 「大和鍋」 に早変わりする。

飛鳥鍋の作り方・レシピ

  1. 鶏もも肉を一口大、白菜はざく切り、ニンジンは皮付きのまま半月切り
  2. しめじは石づきを落としてバラし、豆腐は大きめにカット
  3. 牛乳、水、調味料を入れて沸かす
  4. 火が通りにくい鶏肉、ニンジンを入れる
  5. 沸騰したら残りの野菜、豆腐を入れる

鶏もも肉は一口大、白菜はざく切り、にんじんは皮付きで半月切り。しめじは石づきを落としてほぐし、豆腐は大きめにカットする。

次に、スープをつくる牛乳・水・味噌・鶏ガラスープの素・塩を鍋に入れ、よく混ぜてから火にかける。先に固いものから煮ていく。最も時間がかかるのがニンジン、次に鶏肉を投入。火が通りにくいため、ここでしっかり温める。

続けて野菜と豆腐を入れる沸騰したら、白菜・しめじ・豆腐を入れ、全体が柔らかくなるまで煮込む。

沸騰してニンジンの硬さが取れたら完成。牛乳のやさしい香りと味噌のコクが相まって、ふわりと包み込むようなやさしい味に仕上がる。

飛鳥鍋は翌日に持ち越すと、牛乳の鮮度が変わって少しだけ風味が落ちてしまう。スープが余ったら、うどんやパスタを入れてその日のうちに食べ切るのが正解だ。

食べ方として、溶き卵にくぐらせる方法もある。目隠しで食べたら、すき焼きと間違う味わいになる。本来の飛鳥鍋の味からは離れるが、安価に“すき焼き気分”が味わえるので、これはこれでモハメド・アリ。

食べ方は、〆にうどんを入れること。飛鳥鍋のスープは、驚くほど相性抜群。太麺のコシの強さと、まろやかなスープの組み合わせは悶絶級。味噌の力がとにかく大きく、「冬限定で全国のうどん屋に"飛鳥鍋うどん"を置くべき」と思えるほどハマる。

奈良が生んだミルク鍋「飛鳥鍋」。寒い日にぜひ、家で作って体を丸ごと温めてほしい。うどんの代わりに、奈良が誇る「戎はるさめ」もおすすめである。

明日香村での作り方のコツ

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明日香村では、海外からの旅行者を受け入れるホームステイが行われている。飛鳥鍋は、村の家庭で日常的に食べる料理というより、遠くから訪れた人を迎える日に振る舞う、少し特別なごちそうである。

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おいしく仕上げる最初のポイントは、牛乳の扱い方。牛乳は土鍋で直接温めると焦げつきやすいため、まずはステンレス鍋でゆっくり温め、だしと合わせてスープを作る。急いで強火にせず、鍋底を気にしながら静かに火を入れることで、まろやかでやさしい味になる。

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だしには鶏ガラスープの素を使ってもよいが、ひと手間かけるなら、鶏のつくねを手作りしたい。鍋の中でつくねから旨みが溶け出し、牛乳の甘みと重なって、スープにぐっと深みが出る。

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もうひとつの主役が、鶏もも肉である。そのまま他の具材と煮ても十分おいしいが、先にフライパンで皮目を香ばしく焼いてから鍋に加えると、味はさらに豊かになる。焼き目の香りと鶏の脂がスープに溶け込み、ひと口目から違いがわかる。この方法は、奈良ホテルでも取り入れられている。

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牛乳を焦がさず、つくねでだしを取り、鶏肉は香ばしく焼いてから加える。

ほんの少し手をかけるだけで、飛鳥鍋は、鶏の旨みが幾層にも重なるごちそうへ変わる。土鍋を囲み、湯気の向こうに明日香の風景を思い浮かべながら味わいたい。

本場の味を家庭で:飛鳥鍋シリーズ

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明日香村の郷土料理「飛鳥鍋」を、自宅で手軽に味わえる鍋つゆがある。

その名も「飛鳥鍋シリーズ」。石舞台古墳の駐車場にある「農村レストラン 夢市茶屋」をはじめ、明日香村のお土産店などで販売されている。

味は、「手作り味噌風味」「大和当帰カレー風味」「トマトチゲ風味」の3種類。王道の郷土料理から少し意外なアレンジまで、好みに合わせて選べるのが楽しい。

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袋に入っているのは、3〜4人前の濃縮鍋つゆ。鶏肉や野菜、牛乳を用意すれば、明日香村で受け継がれてきた白い鍋を家庭で再現できる。

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旅先で味わった飛鳥鍋をもう一度食べたい人はもちろん、奈良らしいお土産を探している人にもおすすめである。

手作り味噌風味

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明日香村では、「飛鳥鍋といえば味噌」と言ってよいほど、多くの家庭で味噌を加える。牛乳だけでは淡くなりがちなスープを、味噌のコクと塩気がそっと支えてくれる。

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味噌鍋のように味が前へ出すぎることはない。主役はあくまで牛乳のやさしい甘みと、鶏肉や野菜から溶け出す旨み。味噌はその輪郭を整え、スープに奥行きを与える“援護射撃”に徹している。

白くまろやかなスープが、奈良らしいごちそうへ変わる。鶏肉の脂、野菜の甘み、味噌のコクが牛乳の中で重なり、煮込むほどに味が深くなる。見た目はやさしいが、食べ進めるほど旨みが増していく鍋である。

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最後に残ったスープの〆は、うどんを入れたい。味噌と牛乳が溶け合ったスープが太い麺に絡み、ツルリとした食感のあとから、鶏と野菜の旨みが広がる。鍋の余りを食べるというより、もう一品の料理が始まる感覚に近い。