
- 銘柄:今西
- 土地:奈良県桜井市三輪
- 酒蔵:今西酒造
- 区分:純米吟醸酒
- 原料米:備前雄町
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:14度
- 精米歩合:65%
「今西 純米酒 備前雄町」は、奈良県桜井市三輪の今西酒造が醸す清酒。
今西酒造といえば、全国に名を知られる「みむろ杉」の蔵。その中で「今西」は、蔵元・今西将之氏の名を冠した希少なブランドであり、今西酒造の製造全体のわずか5%ほどしか造られない。蔵の奥にひっそり置かれた、もうひとつの署名のような酒である。

「今西」は、備前雄町を使った純米酒のほかに、朝日米の純米吟醸もある。共に岡山の米を使用しているのが特徴である。

「今西 純米酒 備前雄町」は、「純米酒」に分類される。米と米麹のみを原料とし、醸造アルコールを一切加えないため、米本来の旨味や甘み、そして自然な酸がそのまま現れるのが特徴。精米歩合は65%。削りすぎない。磨きすぎない。備前雄町のきれいな芯を残しながら、米の素朴なふくらみも残す。

2026年からは、協会901号酵母を使用し、アルコールを15度から14度の原酒へとリニューアル。雄町が持つ豊かな甘味と旨味を軽快に表現しつつ、瑞々しい酸と心地よいほろ苦さでキレよく仕上げている。

今西酒造が「雄町」を使う酒としては、春酒の「みむろ杉 華きゅん 純米吟醸 無濾過生原酒 おりがらみ」がある。

ボトルデザインは、深い緑の瓶に、えんじ色のラベル。中央には白く大きく「今西」の文字。名前だけで勝負する、強い酒の顔である。
華やかな赤ではない。熟した果実の赤でも、祝いの赤でもない。土の中に眠る火のような赤。雄町という米の奥にある、温かい芯をそのまま色にしたような佇まい。
首元に斜めに貼られた「備前雄町」の短冊は、酒蔵の手書き札のようで、量産品ではなく、蔵人が「これは特別だ」と印をつけた一本に見える。白い文字、赤いラベル、緑の瓶。その対比が美しく、青い切子の杯と並ぶと、酒席に凛とした緊張感が生まれる。
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味わい

香りは、すっきりとしていながら華やかである。強く主張する吟醸香ではない。グラスの奥から、静かに立ち上がる。川辺に立ったとき、風の中にふと草花の匂いが混じるような、控えめな華やかさである。
口に含むと、まろやかで甘い米の味わいが広がる。雄町らしいふくらみがある。けれど、だらしなく広がらない。すぐに酸が背筋を伸ばし、ほろ苦さが余韻を整える。
イメージは、川の清流。山から流れてきたばかりの、少し冷たく、少し厳しい水。奈良でいうなら、初瀬川のような流れ。やわらかく見えて、底には石がある。甘いのに、甘さに沈まない。まろやかなのに、輪郭は失わない。
男性的な酒だが、力で押す酒ではない。山のようなどっしりさを持ちながら、川のように流れていく。雄町の甘みと旨みが、三輪の水に洗われて、清流のような表情を得ている。
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燗酒の味わい

結論から言えば、最も美味しい飲み方は冷やである。ただ、燗酒にする意味はある。

ぬる燗にすると、少し風味は抜ける。だが、その分、酒全体がまろやかになる。冷やで感じた清流の厳しさが、湯気の向こうで少しほどける。雄町の甘みがふくらみ、米のやさしさが前に出る。尖りが取れ、丸くなる。

上燗にすると、さらに風味が抜ける。飲みやすさは増すが、この酒の持つ繊細な香りや清流感はやや遠くなる。燗にするなら、上燗よりぬる燗のほうがいい。

熱燗まで上げると、別の面白さがある。ここまで熱くなると、少し甘みが立ち、温度そのものが心地よい。香りで飲む酒ではなく、身体で受け止める酒になる。燗酒にするなら、ぬる燗か熱燗。この2つが、この酒の別の扉を開けてくれる。
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日本酒ブレンド

今西酒造の夏酒「三諸杉 夏純米」と、「今西 純米酒 備前雄町」をブレンドする。
雄町のまろやかさは失われない。そこに、山田錦のエレガントな透明感が加わる。すると、酒全体が少しだけ夏に寄る。
備前雄町の落ち着いた甘みが土台となり、三諸杉 夏純米の清涼感がその上を流れていく。雄町単体では山の気配が強かった酒に、涼しい風が入る。重心は残しながら、後口はすっきりする。
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相性のいい料理

- 塩ラーメン:塩の出汁と酒が呼応してスッキリする
- 和風パスタ:濃厚なパスタに負けず、味がキリッとする
- ちらし寿司:日本酒の酸が寿司飯やネタと合う
- 握り寿司:酢飯の酸がすっきりする

塩ラーメンは、塩の出汁と酒が呼応する。スープの旨みを酒が受け止め、後口をすっきり流す。塩気と米の甘みがぶつからず、むしろ互いを透明にする。

和風パスタは、濃厚な味にも負けない。醤油や出汁、きのこの旨みを受け止めながら、最後にキリッと締める。雄町のまろやかさがソースを包み、酸が後味を整える。

ちらし寿司は、日本酒の酸が寿司飯やネタとよく合う。酢飯の酸味に酒の酸が寄り添い、魚介や卵の甘みをきれいに引き立てる。

握り寿司もいい。酢飯の酸がすっきりし、ネタの余韻を邪魔しない。酒が前に出すぎず、しかし存在感は残す。寿司のあとに、雄町のやさしい甘みが静かに広がる。
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原料米:備前雄町

「備前雄町(びぜんおまち)」は、1859年に岡山県で発見された、交配されていない日本古来の原生種である酒米。心白(しんぱく)と呼ばれる米の中心の白い部分が大きく、もろみの中で溶けやすいため、お酒に濃醇な旨味や深い味わいをもたらす。
日本酒のルーツとして「山田錦」「五百万石」「美山錦」と並び、「四大酒米」の一つに数えられている。稲穂が長くて倒れやすく、病害虫にも弱いため栽培が難しく、現在では岡山県を中心に栽培が復活し、多くの酒米品種の祖先となっている。

バランスが良く、リッチでエレガントな山田錦に対し、雄町は個性的で、旨みがグッとくる。日本酒マニアに好まれる酒米である。
酒蔵:今西酒造

奈良県桜井市三輪にある今西酒造は、万治三年(1660年)創業の酒蔵で、現在は十四代目の今西将之が蔵を率いている。日本最古の神社・大神神社の門前に位置し、酒の祖神を祀る活日神社や杉玉発祥の地としての歴史を背負う。蔵の理念は「清く、正しい、酒造り」であり、三輪山の伏流水「神宿る水」と米を大切に使い、蔵元自ら田んぼに立つ。

十四代目が継いだ当時、蔵は債務超過で荒れていたが、修行を重ね、米洗いの地道な作業を一万回以上繰り返し、酒質を高めていった。その結果、「三諸杉」「みむろ杉」は日本酒専門家や品評会で高く評価され、仙台日本酒サミットでは蔵部門・酒販店部門で5年連続1位を獲得している。山口智子、中田英寿、須藤元気などの著名人も酒蔵を訪ね、いまや全国的に注目を集める酒蔵であり、入手困難になりつつある。
日本酒におすすめのグラス
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今西酒造の「三諸杉」
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み」シリーズ
今西酒造の「みむろ杉」シリーズ
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