
日本酒発祥の地・奈良県桜井市三輪。この地で万治三年(1660年)から酒造りを続けてきた今西酒造が、令和7年(2025年)4月、日本最古の神社・大神神社の二の鳥居前に新たな酒蔵を構えた。「三輪伝承蔵」である。

この蔵に込められているのは、「三輪に足を運んでほしい」という強い想い。三輪伝承蔵で造られる酒は、通販では扱わず、酒販店にも卸さない。ここを訪れた人だけが手にできる、現地限定の清酒として仕込まれている。
その代表作が「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み」である。
この酒は、単なる限定販売品ではない。そこには、今西酒造の酒造りを貫く四つの哲学が明確に込められている。
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込みの哲学
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦65
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風65
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 奈々露60
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風60
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦60
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風50
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦50
- 三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦35
三諸杉 三輪伝承蔵仕込みの哲学

「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み」の製法は、室町時代に奈良で生まれた最古の酒母製法・菩提酛のみを採用。仕込みには吉野杉の木桶を用い、米は奈良県産米のみを使用する。さらに酵母は、三輪伝承蔵で育まれた蔵付酵母を用いるという徹底ぶり。

「三輪を飲む」という思想のもと、今西酒造が掲げる「甘く、酸味があり、なおかつきれいな酒」という理想を、これまで以上に具体的なかたちで表現した一本となっている。

「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み」は、三輪の風土と歴史を、そのまま口に含むような体験をもたらしてくれる一献。伝承の地・三輪から生まれた、日本酒の新たな“聖典”と呼ぶにふさわしい存在である。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦65

- 原料米:奈良県産山田錦
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:65%
- 価格:2,200円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦65」は、見た目の重厚さとは裏腹に、口当たりは驚くほどなめらか。最初に感じるのは、静かに広がる米の甘みとふくらみ。その後、初瀬川を渡る風のような清らかさが舌を洗い、透明感のある酸が全体を引き締める。余韻は長く、どっしりとした骨格の奥に、やわらかな光が差し込むような感覚が残る。
料理との相性も幅広い。ローストビーフの赤身には酒の骨格が寄り添い、肉の旨みと米の力が一体となる。蒲鉾の甘味噌だれには酸が調和し、味わいに奥行きを与える。
素朴な三輪そうめんには酒の甘さが自然に呼応し、茄子の唐辛子炒めでは辛味をやさしく包み込む。さらに、とんこつ醤油そうめんのような濃厚な料理と合わせると、酒の輪郭が際立ち、その懐の深さが際立つ。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風65

- 原料米:奈良県産露葉風
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:65%
- 価格:2,200円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風65」は、口に含むとまずコクとまろみが広がり、その後すっと喉を抜けていく切れの良さが印象的な一本。低アルコール設計ながら重心は低く、凛とした辛口の表情を見せつつ、余韻にはやわらかな甘みが静かに寄り添う。飲み進めるほどに表情が変わり、翌日にはフルーティーさが前に出るなど、味わいの奥行きと変化を楽しめる酒である。
料理との相性は、素材の味を整える方向に力を発揮する。奈良漬や漬物類では酸と塩味を品よく洗い、口中をまろやかにまとめる。冷やし三輪そうめんや冷奴では、露葉風由来のやさしい甘みが涼感を添える。
親子丼と合わせれば旨みの輪郭が引き締まり、柿の葉寿司では酢と塩をなめらかに受け止め、余韻を静かに伸ばす。露葉風の素直な旨みと菩提酛の設計が生む、“整える力”が際立つ純米酒である。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 奈々露60

- 原料米:奈良県産奈々露
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:60%
- 価格:2,750円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 奈々露60」は、口に含むとまず、とろりとした質感とやわらかな甘みが広がり、次第に透明感のある酸が軽やかに抜けていく。菩提酛ならではの奥行きを持ちながら、雑味はなく、静かで円熟した佇まいが印象的だ。時間とともに果実感が増し、開栓後は熟した林檎を思わせる艶やかな表情へと変化していく。
料理との相性は非常に幅広く、素材と出汁を生かす料理で真価を発揮する。ちらし寿司では酢飯の酸を酒の甘みが引き締め、輪郭を明確にする。握り寿司では醤油やわさびの余韻をさらりと洗い、魚の香りと旨味を引き立てる。
天ぷらやレタスチャーハンでは油や胡椒の刺激を軽やかに包み込み、後味を整える。三輪そうめんでは塩気と小麦の旨味が酒のミネラル感と重なり、涼やかな余韻が長く続く。ペペロンチーノや味噌ラーメンのような個性の強い料理にも寄り添い、全体をまろやかにまとめ上げる包容力を備えた特別純米酒である。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風60

- 原料米:奈良県産露葉風
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:60%
- 価格:2,750円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風60」は、口に含むとまず、冷ややかで張りのある感触が舌を走り、すぐに米由来の旨みが静かに広がる。軽快でありながら重心は低く、凛とした輪郭を保ったまま余韻へと向かう。初日は端正で辛口寄りの印象だが、時間を置くことで甘みがほどけ、かすかな苦味が奥行きを加えていく。
料理との相性は、塩味や出汁を軸にした品で際立つ。醤油餅では塩気のあとを透明な余韻が整え、うどんでは昆布出汁の旨味と寄り添いながら、温かさの中に涼やかさを残す。焼き鮭では塩と脂を穏やかに受け止め、米の旨味が全体をまとめ上げる。
味噌ラーメンでは味噌の甘みに対して切れの良さが際立ち、ペペロンチーノでは唐辛子の鋭さをやさしく洗い流してオリーブの香りを引き立てる。トンテキの脂も重さを残さず、後口に木桶由来の清香を漂わせる。冷と燗、和と洋を問わず、静かな力で料理を整える酒である。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦60

- 原料米:奈良県産山田錦
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:60%
- 価格:2,750円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦60」は、口に含んだ瞬間、瑞々しい透明感が一気に舌を駆け抜ける一本。無濾過生原酒で出会えた場合、その若々しい躍動感は格別で、ピチピチとした生命感の奥に、山田錦由来の穏やかな甘みが静かに息づく。甘さは前に出すぎず、日を追うごとに輪郭を深め、透明感と調和しながら酒の芯を形づくっていく。
料理との相性は、濃淡を問わず幅が広い。焼きそばではソースの重さをすっと洗い流し、甘い余韻で料理全体を引き上げる。一筋縄そうめんとは、澄んだ出汁と酒の透明感が重なり合い、土地同士の必然を感じさせる調和を生む。
焼肉では脂をさらりと整え、次の一口へと口内を清める役割を果たす。納豆とは発酵同士が響き合い、複雑な旨味の奥に潜む甘みを酒がやさしく照らす。さらにカレーと合わせれば、スパイスの角が丸まり、香りと甘みが溶け合う瞬間が訪れる。清らかさと甘みを併せ持つ、“始まりの気配”を宿した酒である。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風50

- 原料米:奈良県産露葉風
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:50%
- 価格:3,300円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 露葉風50」は、口に含んだ瞬間は驚くほど静かで、ほとんど無味に近い透明感から始まる。しかし、その無音の奥から米の旨みがゆっくりと立ち上がり、澄んだ甘みと柔らかな酸が波紋のように広がっていく。精米歩合50%ならではの雑味のなさが際立ち、時間が経つにつれて甘みが開き、後口には青空を思わせる清冽な余韻が残る。
料理との相性は、塩味や油を受け止める力に優れる。チャーハンでは塩の輪郭が酒のキレを引き立て、トンカツでは油の重さをすっと洗い流す。塩ちゃんこ鍋では素材の旨みと寄り添い、〆の雑炊では酒と出汁が溶け合い、調和が最高潮に達する。
カチョエペペでは胡椒の刺激をやさしく包み、枝豆では塩気に寄り添いながら豆の甘みを引き出す。味噌鍋とも相性がよく、味噌の深みに埋もれることなく、甘辛の輪郭を整えて余韻を伸ばす。主張するのではなく、静かに寄り添い、料理の質感を一段引き上げる特別純米酒である。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦50

- 原料米:奈良県産山田錦
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:50%
- 価格:3,300円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦50 午年限定HINOEUMA」は、口に含んだ瞬間、ピチピチと弾けるフレッシュ感と清らかな立ち上がりが広がる。完成ではなく、動き出したばかりの生命感が、この酒の核だ。
甘みは柔らかく、輪郭にはわずかな厳しさが残る。粗削りでありながら、飲み進めるほどに芯が定まり、余韻は一本の道となって静かに続いていく。無濾過生原酒で出会えたときには、その若々しさと透明感が、よりストレートに伝わってくる。夜明け前の大和の空を思わせる、静と動を併せ持つ佇まいである。
酒単体でも魅力は十分だが、料理と合わせることで表情はさらに広がる。豚しゃぶでは脂を洗い流し甘みを際立たせ、チャーハンでは香ばしさを整えてキレを引き出す。海老フライは油を切り、寿司では酢やわさびと調和し透明感を保つ。塩ちゃんこ鍋や焼き餅では、清らかさと余韻が一層伸びる。ラベルは年末の季節限定ラベル。
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦35

- 原料米:奈良県産山田錦
- 原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
- アルコール:13度
- 精米歩合:35%
- 価格:11,000円(720ml)
「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 山田錦35」は、米を極限まで削り出した精米35%によって生まれた、三輪伝承蔵の到達点ともいえる一本。口に含んだ瞬間、まず現れるのは澄み切った切れ味と清涼感。その直後、舌の奥で山田錦の核となる骨格が静かに立ち上がり、軽やかさと重心の低さが同時に伝わってくる。
雑味は徹底して排され、甘さも香りも誇示しない。それでいて余韻は深く、長く、最後まで崩れない。精米35%という数字が、理屈ではなく“重み”として感じられる酒だ。派手さではなく、黙って背中を見せるような父性を湛えた佇まいが、静かな夜の一杯に強い印象を残す。
基本は酒単体で向き合いたい完成度だが、料理を添えるなら辛味や発酵を伴うものが好相性。ペペロンチーノでは油と唐辛子を洗い流し、酒の立体感を一段引き上げる。漬物とは発酵同士が静かに共鳴し、酸味に奥行きが生まれる。カレーは辛味がキレを際立たせ、輪郭を明確にする意外な名コンビ。飛鳥鍋では温と冷の対比が、清涼感と余韻をいっそう深く響かせる。
三輪の核を飲む一滴。思想と工芸が結晶した、静かで揺るぎない純米酒である。
大神神社の参道にある三輪伝承蔵
日本酒サミットで1位に輝いた「ディオアビータ」
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