大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

今西酒造「三輪のどぶろく」〜白き奔流、三輪山の麓で芽吹く最古の荒魂

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  • 銘柄:三諸杉
  • 土地:奈良県桜井市三輪
  • 酒蔵:今西酒造
  • 区分:どぶろく
  • 原料米:ヒノヒカリ(麹米)
  • 原材料:米(国産)、米麹(国産米)、
  • アルコール:13度
  • 精米歩合:なし
  • 価格:1,980円(720ml)

「三輪のどぶろく」は、奈良県桜井市にある今西酒造がつくる「どぶろく」。飲むと、まず胸を打つのは “生きている” という実感。ガスを孕み、発酵を続けるどぶろくは、清酒とはまったく異なる。瓶の内側に、小さな宇宙が脈動しているよう。

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どぶろく(濁酒)は、米と米麹と水を原料に、発酵させただけで漉(こ)す工程を経ていない日本酒。新海誠『君の名は。』で有名になった「口噛み酒」を原型とし、実在した最古の杜氏・高橋活日が造ったのも、どぶろくと考えられている。

「三輪のどぶろく」は、11月に入ってから造られ、今西酒造の新酒の季節を告げる。限られた酒蔵しか造ることが許されないが、今西酒造は日本最古の神社・大神神社の御神酒を醸造している関係から、『濁酒を醸造する免許』を古くから持っている。

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「開栓時爆発注意」の赤い文字は、挑発してくるかのようだ。覚悟はあるか、と。「三輪のどぶろく」は、酵母が生きているため、瓶内発酵を続けている。開栓時は、吹きこぼれる可能性があるので、ふたを開ける際は、ゆっくりと開け、お酒が吹き上がりそうになったらふたを閉めるなど注意しながら開栓する。

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「三輪のどぶろく」は、粒感・ゴロゴロとした食感なので、飲むお酒ではなく、食べるお酒である。

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ボトルデザインは、淡い水色を背景にした墨字の“どぶろく”の文字。水墨画のように揺らぎ、透明感と荒々しさが同居する。飾り気はない。この素朴さこそ「どぶろく」という酒の本質であり、三輪の地で千年以上受け継がれてきた酒造の歴史そのものが、瓶の中に凝縮されている。

 

味わい

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グラスに注ぐと、雪解け水のような乳白色が波紋を描く。ひと口含めば、まず舌を打つのは 力強く野性味のある発泡感。細かな米粒がプチプチと弾け、口内に生命の鼓動が走る。次いで押し寄せるのは、米の甘味、酸味、そしてアルコールの芯が渾然一体となった “原始の味”。まろやかでも洗練でもない。ただ、まっすぐだ。

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太古より続く酒の原型をそのまま飲み干すような、圧倒的なプリミティブ(原始)さがある。飲み続ければ、身体の芯がじんわり熱を帯びていく。ふと、古代の巫女・卑弥呼や、高橋活日の姿が脳裏をよぎる。酩酊とは神に近づく行為だと言わんばかりに、どぶろくは静かに、しかし確実に心の境界を揺らしてくる。

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炭酸水だけで割る“どぶろくハイボール”は、原酒の中に閉じ込められていた息吹が解き放たれるようで、飲むほどに心が軽くなる。個人的には、このシンプルな割り方こそが最良だと思っている。どぶろくの野性と、炭酸の爽快さが互いを引き上げ、気づけばもう一杯に手が伸びてしまう。

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洗練ではなく 原始の美。透明ではなく 濁りの輝き。整いではなく生命の躍動。この酒を手に取ると、いつのまにか、遥か昔の三輪山の麓に立っている。

「三輪のどぶろく」は、過去と現在をつなぐ“白き奔流”である。

 

相性の良い料理

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  • 奈良漬:甘味と酸味が交互に重なり、発酵同士の旨味が波のように続く
  • 寿司:酢飯とどぶろくの酸味が自然に溶け合い、海鮮の旨味を引き立てる
  • 唐揚げ:油を爽やかに洗い流し、肉の旨味をすっと残す
  • チーズ:発酵の香りがやわらかく重なり、塩味が丸く整う
  • 三輪そうめんチャンプルー:香ばしさと爽快感が共鳴、喉ごしが軽くなる

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今西酒造が造る奈良漬は、甘い奈良漬のコクが、どぶろくの酸味と米の甘味を引き出し、交互に押しては返すように旨味が波をつくる。古代から続く“発酵文化の二重奏”。

チーズは、発酵 × 発酵の組み合わせ。強烈なマリアージュではないが、どぶろくの酸味がチーズの塩味を丸め、しっとりと寄り添う。

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寿司は、酢飯の酸が、どぶろくのミルキーな甘味と調和し、海鮮の旨味をそのまま引き受ける。最も自然で、気負いのない相性。

唐揚げは、衣の油がふっと消え、肉の旨味だけが舞台に残る。どぶろくの炭酸がリセットしつつ、余韻は柔らかく続く。

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三輪そうめんチャンプルーは、驚くほど相性が良い。炒めた麺の香ばしさに、どぶろくの爽快感が加わると、軽やかで抜けの良い後味になる。三輪の地の酒と三輪の麺。“土地の相性”がそのまま味に出る組み合わせ。

 

原料米:奈良県産ヒノヒカリ

原料米:奈良県産ヒノヒカリ

ラベルには、原料米は「米(国産)」としか書かれていないが、酒屋さんなどの情報によると、麹米は奈良県産のヒノヒカリとのこと。

ヒノヒカリとは、1989年に宮崎県で「コシヒカリ」と「黄金晴」を交配して育成された、西日本に多い主食用米。近年ではその味わいや特徴を活かした日本酒造りにも使われ、酒米の基準は満たさないものの、日本酒に合う風味を持つ。フルーティーな甘み、旨み、適度な酸味がバランスよく調和し、ふくよかで繊細な味わいの日本酒に仕上がる。

 

酒蔵:今西酒造

今西酒造〜三諸杉の香り、三輪の祈りを醸す酒蔵

奈良県桜井市三輪にある今西酒造は、万治三年(1660年)創業の酒蔵で、現在は十四代目の今西将之が蔵を率いている。日本最古の神社・大神神社の門前に位置し、酒の祖神を祀る活日神社や杉玉発祥の地としての歴史を背負う。蔵の理念は「清く、正しい、酒造り」であり、三輪山の伏流水「神宿る水」と米を大切に使い、蔵元自ら田んぼに立つ。

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十四代目が継いだ当時、蔵は債務超過で荒れていたが、修行を重ね、米洗いの地道な作業を一万回以上繰り返し、酒質を高めていった。その結果、「三諸杉」「みむろ杉」は日本酒専門家や品評会で高く評価され、仙台日本酒サミットでは蔵部門・酒販店部門で4年連続1位を獲得している。山口智子、中田英寿、須藤元気などの著名人も酒蔵を訪ね、いまや全国的に注目を集める酒蔵であり、入手困難になりつつある。

日本酒サミットで1位に輝いた「ディオアビータ」

 

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