大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

白山比咩神社〜言の葉のはじまり 、桜井に吹く万葉の風

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奈良盆地の東、初瀬の山裾に、ひっそりと佇む社がある。白山比咩神社。読みは「はくさんひめじんじゃ」。古くは白山神社とも呼ばれ、桜井市黒崎の集落に息づいてきた土地の鎮守である。

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初瀬街道を歩けば、家並みの間から石鳥居が顔を出す。石柱には「白山神社」の名。両脇には提灯が吊られ、祭りの名残をかすかにとどめている。参道は狭く長い。真っすぐに延びた石畳の先、国道165号を挟み、古い参道の奥に小さな拝殿が見える。小ぶりながらも、軒瓦の光が澄み、どこか誇り高い佇まいを見せる。

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「泊瀬朝倉宮伝承地」と記された案内板が立つ。ここは、第21代雄略天皇の宮跡と伝えられる場所だ。雄略天皇はこの地・泊瀬の里に宮を構え、政を執ったという。

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雄略天皇は、御所の葛城一言主神社に銅像がある。

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境内には、風を集めるように老杉が立ち、いくつもの石灯籠が時の層を重ねて並ぶ。苔むした石の上には、秋の木の葉が静かに降り積もっている。

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その傍らに「萬葉集発耀讃仰碑(まんようしゅうはつようさんがんのひ)」と刻まれた碑が建つ。この地こそ、“日本最古の歌集”が息づき始めた場所と伝えられる。

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碑文に刻まれるのは、万葉集巻第一の冒頭に置かれた、雄略天皇の歌。
「籠もよ み籠持ち 堀串もよ み堀串持ち この岡に 菜摘ます児 子らが手本に 何摘ます」

大和の王が野の少女に語りかけた恋の歌。その舞台が、この黒崎の丘であったと伝わる。白山比咩神社の静けさは、その一首を包み込むようにある。

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拝殿の奥に祀られるのは白山比咩命(しらやまひめ)。『日本書紀』に登場する女神で、主に縁結び、夫婦円満、家内安全、開運の神として知られる。伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)の仲裁をした神話から、仲直りや物事をまとめる神とされている。菊理媛神(くくりひめのかみ)と同一人物で、安倍文殊院の白山堂に祀られている。

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秋の陽が射すと、社殿の格子越しに木漏れ日が揺れ、風が杉葉を鳴らす。人影の絶えた境内で、遠い歌の余韻がまだ息づいているようだ。

万葉の声が生まれた場所。ことばと祈りの源流が、ここにもある。白山比咩神社は、「万葉集発祥の地」として、いまも静かに時をつないでいる。

白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ) 基本情報・概要

  • 名称:白山比咩神社(別称:白山神社)
  • 読み:はくさんひめじんじゃ/しらやまひめじんじゃ
  • 所在地:奈良県桜井市黒崎339
  • 祭神:白山比咩命(しらやまひめのみこと) ※菅原道真を合祀する記録あり
  • 旧社格・役割:旧指定村社
  • 年中行事:拝殿での祭典などが行われる(詳細未確認)

雄略天皇のゆかり