大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

安田靫彦《飛鳥の春の額田王》万葉歌が息をひそめる余白

安田靫彦《飛鳥の春の額田王》

  • 作者:安田靫彦
  • 制作:1964年
  • 寸法:131.1×80.2cm
  • 技法:紙本著色
  • 所蔵:滋賀県立美術館

大正から昭和にかけて活躍した日本画・安田靫彦が描いたボッティチェッリの《プリマヴェーラ(春)》

飛鳥時代の歌人・額田女王が畝傍山、香久山、耳成山の大和三山を背景に佇む。川原寺、本薬師寺、藤原宮、板葺宮、飛鳥寺、山田寺が描かれ、梅の花がわずかに咲いている。安田靫彦は19歳で飛鳥を訪れ、80歳を前に最高傑作を完成させた。

感情が風景へと溶け込む手前の、わずかな余白。あすかびとの心象としての万葉世界、歴史が生まれた空気が描かれる。

額田女王は、表情も衣装も何も語らない。

・このあと誰を想うのか
・どんな歌が生まれるのか
・何を見て、何を見なかったのか

安田靫彦が描いたのは、答えではなく、その余白である。額田女王の凛とした佇まいは、過ぎ去った季節ではなく、これから訪れる春を、静かに迎え入れている。

額田女王の和歌

大和三山

ボッティチェッリ《プリマヴェーラ》