大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

天平庵「藤花」〜静かな甘美、甘さが、遠くを思わせる

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  • 名称:藤花(ふじばな)
  • 原材料:砂糖(国内製造)、加糖練乳、小豆、小麦粉、いんげん豆、バター、卵、還元水飴、蜂蜜、全脂粉乳、米飴/トレハロース、膨張剤
  • 販売期間:通年
  • 賞味期限:70日
  • 販売元天平庵
  • 価格:180円

「藤花(ふじばな)」は、奈良県桜井市の和菓子店・天平庵が手がける、しっとりと焼き上げた焼饅頭である。

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2021年3月に発売されて以来、穏やかな甘さとやさしい口どけで、通年菓子として親しまれている。

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餡には、北海道十勝産のエリモショウズを使用。小豆といんげん豆を用いたなめらかなこし餡に、加糖練乳を加えて炊き上げることで、豆の輪郭を損なわず、まろやかなコクを引き出している。その餡を包む生地は、バターや卵、蜂蜜を用いたミルク風味豊かな配合で、焼き色は淡く、藤の花を思わせるやわらかな色合いに仕上げられている。

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菓名は、『万葉集』に収められた大伴四綱の一首「藤波の 花は盛りになりにけり 平城の京を 思ほすや君」に由来する。

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九州・太宰府にあって、遠く奈良の都を思った歌人の心情を、藤の花に託したこの歌に倣い、「藤花」は郷愁と静かな想いを映す菓子として名付けられた。小豆の色合いで藤の花の気配を表し、過去と現在をやわらかくつなぐ意匠が込められている。

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賞味期限は約70日と日持ちもよく、贈答用としても扱いやすい一方で、日常の茶菓としても自然に溶け込む存在である。

味わい

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ひと口含むと、しっとりとした生地がほどけ、こし餡の甘みが清流のように舌を流れる。練乳由来のやさしい乳味が小豆の風味を包み込み、角のない甘さとなって静かに広がる。その余韻は、雪解け水が消えるように儚く、後口に重さを残さない。

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甘さは控えめでありながら、芯のある満足感がある。「甘美」という言葉が、声高ではなく、自然に腑に落ちる味わいだ。

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「藤花」は、万葉の歌がそうであるように、強く主張せず、しかし確かに心に残る。静かな午後の茶席に、そっと寄り添う一菓である。

天平庵の銘菓

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