大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

素盞嗚神社(江包)〜桜井版ロミオとジュリエット、禁じられた村と夫婦神の神事

素盞嗚神社(江包)

奈良の桜井市には、スサノオを祀る神社が全部で五つある。表記は少しずつ違う。

  • 素佐男神社(奈良県桜井市三輪)
  • 素盞鳴神社(桜井市慈恩寺)
  • 素盞雄神社 (奈良県桜井市初瀬)
  • 須佐之男神社 (奈良県桜井市辻)
  • 素盞鳴神社 (奈良県桜井市江包)

実家のいちばん近くにあるのは八阪神社で、そこでもスサノオが祀られているので、素盞嗚神社を見ると、足を踏み入れずにはいられない。

素盞嗚神社(江包)

スサノオを祀る神社は山間にあることが多いが、江包(えっつみ)は初瀬川の右岸にあり珍しい。

祭神はスサノオ。天照大神の弟であり、大国主神(おおくにぬし)の父。荒ぶる力を持ち、風雨や疫病を鎮める村の守り神として古くから信仰されてきた。ただし、江包の素盞嗚神社は、他にはないエピソードを持つ。

この地で行われるお祭りが、江包・大西の御綱(えっつみ・おおにしのおつな)。初瀬川をはさんで向かい合う江包(えっつみ) と 大西(おおにし) の二つの地区が協力して行う、神さまの「結婚式」を再現する祭りである。地元では「お綱祭り」または「お綱はんの嫁入り」と呼ばれる。

  • 江包の人々が 素盞嗚尊(すさのおのみこと)
  • 大西の人々が 稲田姫(いなだひめ)

伝承では、大同4年(809年)に、三輪山に祀られていた素戔嗚尊と稲田姫が洪水で流され、初瀬川を挟んだ右岸の江包に素戔嗚尊が、左岸の大西(旧織田村大西)に稲田姫が流れ着いた。そして、災いが続いたことから夫婦神を別々に祀るのが良くないと、年に一度夫婦の契りを結ぶ神事を行うようになった。

祭りでは、両地区の住民が新しい藁を持ち寄り、江包の 春日神社で男綱を作り、大西の 綱越神社で女綱を作る。

そして、最後に両方の綱を素盞嗚神社に運び、ここで「入舟の儀」という儀式を行う。この儀式は、素盞嗚尊と稲田姫が舟で到着し、結婚することを象徴する。

上田秋成の『岩橋の記』によると、昔は両村の間で、結婚が禁止されていたという。桜井版、ロミオとジュリエットである。かつては旧暦正月十日に行われていたが、現在は 2月11日 に行われている。来年は、初瀬川のほとりで神々が結ばれる様子を、目の前で見たいと思っている。

 
 
 
 
 

桜井のスサノオ神社

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