大和ふるさと手帖〜奈良だより

故郷・大和(なら)のまほろばを紹介します。歴史、風土、寺院、遺跡、古墳。あすかびとを目指して。

奈良の神社

横内神社(奈良県桜井市大福)〜電車の背後に祈りあり、君が代の神社

奈良県桜井市大福に鎮座する横内神社は、JR桜井線(万葉まほろば線)の線路を背に南を向いて立つ。社のすぐ背後を列車が走り抜け、古代と現代の時間が交差する不思議な場所にある。 創建は詳らかではないが、推古天皇21年(613年)に整備された古代の官道「…

春日神社(桜井市吉備)〜こんなに“オープン”な神社がある

奈良県桜井市吉備に鎮座する春日神社は、近鉄大阪線「大福駅」からほど近い場所にある。奈良県内には「春日神社」の名を冠する社が3,000を超え、桜井市だけでも5社以上が存在するが、吉備の地に二つの春日神社(「春日神社」と「吉備春日神社」)が並び立つ…

狛犬に宿る日本の心〜神社の門を守る“見えない力”、石の瞳は、祈りを見ている

等彌神社の狛犬 神社や寺院を訪れると、参道の両脇で出迎える一対の獣像がある。それが「狛犬(こまいぬ)」である。凛々しい姿をした狛犬は、神社の象徴的存在として日本人に親しまれてきたが、なぜそこに置かれているのか、どんな意味を持つのか?狛犬の由…

三十八柱神社(桜井市大福)〜38の神々と歩む千年

奈良県桜井市、近鉄大阪線の「大福駅」から北へ5分ほど歩くと、木々に囲まれた静かな社・三十八柱神社(みそやはしらじんじゃ)が現れる。石鳥居の先に延びる参道を進むと、風に揺れる木漏れ日が足もとを照らし、やがて切妻造の拝殿と、春日造銅板葺の本殿が…

八阪神社(桜井・東新堂)〜川のほとりの時を祓う神社

奈良県桜井市東新堂。田園と住宅がゆるやかに混じり合うその一角に、寺川が穏やかに流れている。 川沿いを歩くと、やがて「東新堂公民館」の前に、小さな鳥居と社叢が現れる。それが、八阪神社である。 奈良県桜井市には、八阪神社が5社以上もある。表記も「…

素盞鳴神社(慈恩寺)〜線路のほとりのスサノオ、朝倉の風と岩の祠

近鉄大阪線・大和朝倉駅の南口を出ると、線路に沿って細い道が東へ延びている。民家の合間を縫うように進むと、ほどなく「慈恩寺町」の小さな集落に入る。 そこに、山の端を背にしてひっそりと鎮座するのが、素盞鳴神社(すさのおじんじゃ)である。ここまで…

十二柱神社〜出雲の里に眠る、相撲と神代の記憶

桜井市出雲。初瀬川の流れが、山の端をかすめるように蛇行しながら、静かな村を包み込む。そのほとりに、初瀬街道の名残をとどめる一本道がある。 黒い板壁の家が並び、軒先には秋草が揺れている。出雲は、「八雲立つ出雲」の言葉通り、雲が次々とわき出る美…

八阪神社(桜井市高田)〜古墳の森に立つ静寂の荒魂

奈良県桜井市には、八阪神社が5社を超えて点在している。表記も「坂」と「阪」に分かれ、由緒もさまざまだ。大神神社の末社であるもの、集落の鎮守として小高い丘に祀られるもの。どれも似て非なる、独自の風土を映している。 その中で、桜井市高田(たかた…

桜井市上之宮・春日神社〜聖徳太子の風が吹く場所

桜井の上之宮に入ると、風が一段深くなる。等彌神社、安倍文殊院、聖林寺。濃い“気”を放つ古刹に囲まれた一角で、集落の鎮守がひっそり息をひそめている。名は春日神社。全国に三千を超える“春日”のうち、桜井だけでも5社はある。その一社が、上之宮遺跡のそ…

粟殿坐大神神社〜二つの『おおみわ』が語る、桜井の深層と奥行き

粟殿坐大神(おおどににますおおみわ)神社は、奈良県桜井市にある神社。日本最古の神社・大神神社(三輪)の分霊を祭る。 桜井駅北口を出て真っ直ぐ北へ進んだ先に鎮座するが、多くの桜井市民は本社の大神神社へ参拝するため、この神社を訪れる人はそれほど…

志貴御縣坐神社〜大和のはじまりを抱く社

【神社探訪】志貴御縣坐神社(しきみあがたにますじんじゃ)──三輪山南麓・金屋の里に静かに佇む式内大社。 崇神天皇の磯城瑞籬宮跡を背に、古代大和の息づかいを今に伝える。 拝殿の先に青く沈む本殿、石の磐座、そして風の祈り。 大己貴命を祀り、村の収穫…

玉列神社〜桜井の山と椿、森が呼吸し、人が祈る

実家から1キロ。自転車10分。路地を抜けると、空気の密度が少し変わる。畦道の先、白い玉垣と杉の緑が視界をしぼめ、石段の上に小さな社殿が現れる。玉列神社(たまつらじんじゃ) 奈良県桜井市慈恩寺。三輪山の気配が、家並みの屋根を越えてそっと降りてく…

白山比咩神社〜言の葉のはじまり 、桜井に吹く万葉の風

奈良盆地の東、初瀬の山裾に、ひっそりと佇む社がある。白山比咩神社。読みは「はくさんひめじんじゃ」。古くは白山神社とも呼ばれ、桜井市黒崎の集落に息づいてきた土地の鎮守である。 初瀬街道を歩けば、家並みの間から石鳥居が顔を出す。石柱には「白山神…

等彌神社〜まほろばの気が集う、大和の息が満ちる森

ふるさと奈良県桜井市といえば、日本最古の神社・大神神社が有名である。だが、「気(パワー)」の強さで日本一といえば、実は別の場所にある。 等彌神社。読みは「とみじんじゃ」。地名の「鳥見(とみ)」を、古い表記で「等彌」と写した名だ。鳥見山の西麓…

穴師坐兵主神社〜倭姫、兵主を祀る、相撲の森から祈りの社へ

奈良盆地の東、桜井の穴師(あなし)の里。三輪山を南に仰ぎ、低く波打つ丘陵の途中に、ひっそりと森が口を開いている。田畑の間を縫う細い道を進むと、「纒向日代宮伝承地」の標柱が立つ丘に出る。そこからは、大和盆地が広く見渡せる。風は乾き、稲の匂い…

大神神社の末社〜手を合わせる日常へ、神の気配は路地にある

三輪の山裾や集落に点在する大神神社の末社を、歴史・祭神・ご利益とともに巡る。祓い、食、知恵、水――暮らしに宿る小さな祈りの地図。

大神神社の摂社〜祓い・医薬・酒・学問、大物主神の分霊を祀る横顔

大神神社の摂社・狭井神社 境内と境外あわせて10社以上ある大神神社の摂社は、ひとつひとつが大物主神の異なる側面を映す鏡である。 祓い、医薬、学問、醸造、豊穣。それぞれの社は、信仰が人々の生活に根づいていった証であり、三輪という土地全体がひとつ…

摂社と末社の違い〜神社・信仰のネットワーク

橿原神宮の末社・長山稲荷社 神社には「摂社(せっしゃ)」と「末社(まっしゃ)」と呼ばれる小さな社がある。いずれも本社に付属する神社だが、祀られる神や位置づけには明確な違いがある。 摂社と末社の違い 摂社・末社がもたらす現実的(ビジネス)な側面…

富士神社・厳島神社〜古墳の上の二柱、火の姫と水の姫が並ぶ場所

路地がひらけると、家並みのあいだに小さな広場が現れる。砂利が乾き、午後の光が屋根瓦を白く照らしている。石を積み上げた基壇の上、木の玉垣と格子の覆屋。注連縄のしろが風に鳴る。大神神社の末社である富士神社・厳島神社は、奈良県桜井市・茅原の集落…

神御前神社〜神の妻、神の巫女、神婚の社

路地の先で、空気が変わった。茅原の集落を抜けると、白い塀と黒い瓦がつくる静かな四角形が現れる。神御前神社(かみのごぜんじんじゃ) 入口には素木の鳥居、低い姿で並ぶ。白砂の玉砂利は乾いていて、足音をすぐに呑み込む。社号標には「大神神社摂社 神…

御炊社〜三輪の神々の食を司る祈りの杜

大神神社の二の鳥居をくぐると、参道の空気が少し変わる。右手に折れ、社務所の別館へ向かう細い道に入ると、静寂が肌に降りてくる。 白い玉砂利の小径を、斎館の方へ進む。その途中、左手に「御炊社参道」と書かれた小さな案内板がある。 案内板に従って狭…

火産霊神社〜太陽と火のあいだに、三輪・昭和橋のほとりにて

JR三輪駅から歩いて10分ほど。大和川を渡る風が頬を撫でる。橋の欄干には「昭和橋」と刻まれている。 その先に、庭のように小さな社がある。火産霊神社、ほむすびじんじゃ。 対岸には神明神社がある。橋を挟み、川の両脇に社が向かい合う。太陽と火が呼応す…

三輪・神明神社〜太陽と山と大和川のあいだに

大和川にかかる小さな橋を渡ると、正面に三輪山の丸い峰が現れる。雲がゆっくり流れていて、欄干の影が舗装に斜めの縞をつくる。自転車を降り、山へ向かって一息つく。ここからが、神明神社への道のりだ。 神明(しんめい)神社。奈良県桜井市三輪にある社だ…

金拆社〜鳥居も社殿もない、金屋の森に潜む神秘

奈良県桜井市金屋から、朝倉に向かって歩くと、少しずつ人の気配が遠のいてゆく。剣道199号線から徒歩5分ほどだが、秘境と呼んでも差し支えない大神神社の末社「金拆社(かなさきしゃ)」がひっそりと鎮まっている。地元の人に聞いても、名前も場所も知らな…

桧原神社〜伊勢神宮へ続く本殿なき社、三ツ鳥居が導く信仰の源流

奈良県桜井市三輪の山の辺の道沿いに鎮座する桧原(ひばら)神社は、大神神社の摂社であり、古くから「元伊勢」と呼ばれてきた社である。 本殿を持たず、三輪山を神体とし、三ツ鳥居を通して拝む独特の形式は珍しい。ここを訪れれば、伊勢神宮へと続く信仰の…

事比良神社〜桜井・金屋の奥に息づく大神神社の末社

奈良県桜井市金屋(かなや)に、事比良(ことひら)神社という小さな社がある。日本最古の神社とされる大神神社の末社だ。末社(まっしゃ)とは、本社の祭神や由緒と深い縁を持つ神を祀る神社を指す。 その名が示す通り、事比良神社は香川県の金刀比羅宮(こ…

春日社(三輪)〜3000社の中で異彩を放つ秘境、地元の人すら辿らぬ道

全国に「春日神社」と名のつく社は3000を超える。奈良県桜井市に限っても、5つ以上が点在している。呼び名も「春日神社」や「春日社」と揺らぎ、祀られる神々もそれぞれに異なる。だが、その中にあって、ひときわ神秘の色を濃く纏うのが、三輪にひっそりと鎮…

三輪・素佐男神社〜桜井の巨樹と勧請縄の下に

三輪の町を歩くと、家並みの間にひっそりと顔を出す小さな社がある。名を素佐男(すなのお)神社。玉垣に囲まれた境内には石鳥居が立ち、その奥に拝殿が控える。規模は小さいが、漂う空気は濃く、幾代もの祈りが今も息づいている。 10月7日の例祭 牛頭天王・…

葛城一言主神社:一言で叶う祈り、千年を超えて、御所・いちごんさんの信仰

葛城一言主神社(かつらぎひとことぬしじんじゃ)は、奈良県御所市、葛城山の東麓に鎮まる。 境内はうっそうとした社叢に抱かれ、参道を進むと杉木立の間から光がこぼれ落ち、玉砂利に細やかな影を落とす。 正面の鳥居をくぐれば、空気は一段と澄みわたり、…

鴨都波神社〜大和・葛城の古社、川の合流地に鎮まる水と人をつなぐ社

鴨都波神社(かもつばじんじゃ)は、奈良県御所の町はずれ、葛城川と柳田川が寄り添う合流地に鎮まる。石の明神鳥居をくぐると、太い注連縄が陽を受けて揺れ、額に刻まれた社名が白く光る。背後には濃い社叢が立ちのぼり、杉と広葉の匂いが鼻をくすぐる。水…